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この手の中の恋の一片を

BL作家*四ノ宮慶の商業活動等をお知らせするブログです。

 J庭40配布ペーパーSS

『ある日の、恋〜透〜』虹色のキャンバス番外SS

 俺の恋人は、美人や。きっと、ミスユニバースよりも別嬪さんや。
 そんでもって、強くて、可愛くて、ちょっと気難しい。
 夏はアイツの嫌いな季節やけど、この三年間は一番頑張っていた季節。夏休みもほとんど美術室にこもって、でっかいキャンバスに絵を描いてた。
 俺は、ときどき顔を出して、他の美術部員と冗談を言いながら、そんなアイツの真剣な横顔を見るンが好きやった。
 俺は、毎日毎日、その一瞬一瞬に、健治に惚れ直す。
 小さいときから、健治のいいトコ全部知ってるンは、絶対に俺やっていう自信があった。
 健治は美人で別嬪さんで、すぐに泣いて、すぐ怒って、誰よりも繊細で感受性も強くて、傷ついた胸の奥のうんとその奥の方に、誰にも負けへんの優しさを持ってる。
 誰もがそう出会うことのない、酷い経験を何度もしてきたけど、でも、健治は今、ちゃんとまっすぐ前を向いて、自分が行くべき道を見据えてる。
 そういう男前なところも、俺が健治に惚れてる理由。
 見た目が綺麗やからって、ナヨナヨなんかしてへん。
 いつもみたいに健治の部屋に入り浸って、秋の休日を過ごす。
 健治は相変わらずインドア派で、俺は部屋の片隅でスケッチブックにデッサンしてるのを、ゲーム機片手に見るとはなしに見つめてた。
 ベッドの横の小さなテーブルの上に、ポテチの袋。
 健治に袋をこっちにくれるように言ってみたけど、すげない反応。
「ねぇ、健ちゃ〜ん、お願い。ポテチ、取ってぇん」
 ふざけた声でシナをつくって続けると、蔑むような目で健治が俺を睨み返した。
「アホ」
 そのまま、やっぱり俺の希望には応えてくれへん。
 まあ、ええけど……と溜息吐いて、のそりとベッドから這い降りた。
 ぎしぎし小さくベッドが軋む音と、健治が鉛筆を走らせる音が部屋にこもる。
「健治ぃ」
 甘えた声で呼んでも、健治はもう答えない。絵を描いてるときの健治は、どこかちょっと別の次元におるみたいや。
 それでも、俺はめげずに声をかける。「なあ、健治?」
 今日は、まだ一度もその頬に触れてへん。甘い欲望はもう満タン。後少しで、どろりと零れ落ちそう。
 鉛筆を動かす右手を邪魔しないように背後からそっと抱き締めて、健治の左肩に顎をのせる。
「透、重い」
「……淋しいねん、俺」
 耳許で囁くと、ぴくりと肩が跳ねて、鉛筆を走らせる手が止まった。
 ぎゅっと唇を噛み締めて俯いた健治が、怒りながら困ってるのが手に取るように分かる。
「構って~~~」
 唇で耳に触れると、健治が息を詰めて肩を竦ませた。
「……邪魔すんな」
 弱々しく抵抗の言葉を告げて、健治がくいっと首を捻った。
 ほどよく色づいた唇が、俺には誘っているようにしか見えへん。
 すかさず軽く口付けて、ぎゅっと抱き締めた。
「ほんまに嫌やったら、邪魔せぇへんけど?」
 健治が目許を赤く染めて、唇を尖らせた。
 ああ、そういう顔も、サイコーや。
 頬や唇に何度もキスをする。
「健治……、好きや」
 腰から胸へと回した手で、Tシャツの上から小さな突起をツンと突つくと、健治は何も答えへんまんま、あっさりと陥落した。
「……っ!」
 鉛筆とスケッチブックがあっさりと放り出されて、健治がゆっくりと俺へ身体を預ける。
「あほ…透っ」
「あほで結構」
 怒ったように、けど可愛らしく拗ねてみせる健治が、俺は大好き。
「ドあほ……ぉ」
 俺の胸で早くも息を喘がせ始めた健治の肩を、思いきり抱き締めた。
「うん、ほんまやなぁ……」
 もう、誰にも絶対に、触れさせたくない。
 健治に触れるんは、これから先、一生俺だけやって思いを込めて。
 好きや、健治。
 ほんま、好きや。

             end 四ノ宮 慶 (初出 2007.9.8)
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