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この手の中の恋の一片を

BL作家*四ノ宮慶の商業活動等をお知らせするブログです。

 J庭36配布*『虎と竜』宣伝ペーパーSS

『虎と竜~灼熱の純情と冷徹な慾情~』
作*四ノ宮慶 イラスト*小山田あみ先生。
三月末アズ文庫より発売予定
……そういうわけで、本編とはあまり関係ない(こともない)新條くんと泰三くんの日常をちょっと覗いてみましょう!


「おい、泰三はどうしたんだ?」
 午前中、離れた場所にある雀荘の様子を見に行っていた新條は、事務所に舎弟の泰三の姿がないことに気づいた。
「それが、あの……昼前に戻ってきやがったんですが……」
 古株の構成員が苦虫を噛み潰したような顔で答える。
「また朝まで遊び歩いてやがったのか」
 呆れて溜息も出ない。
「戻ってくるなり、布団に沈んでやがります」
「分かった。起こしてくる」
「すんません、若頭」
 寝起きの悪さと寝穢さ、そして女癖の悪さでは右に出るものがいない泰三を起こせるのは、松代組では新條だけだ。組長である松代でさえ、泰三を布団から引っ張り出すことができなかった。
「泰三、オネェチャンが待ってるぞ」
 シンナーでボロボロになった歯を晒し、大口を開けて鼾をかく泰三の枕許にしゃがみ、抑揚のない声で呼びかける。
「お前の大好きなアナルマッサージ、特別割引券百枚ある」
「マジっすか  っ!」
 ほんの数秒前までピクリとも反応しなかった泰三が、ガバッと脚を放り出すようにして起き上がった。爛々と目を輝かせ、新條の目をレンズ越しに見つめる。
「ねぇねぇ、兄貴! どこ? どこの店っすか?」
 よれよれのTシャツをボクサーパンツという格好で、泰三が苦しそうに股間を押さえる。
「……って、やべ、想像しただけてチンコ勃っちゃっ……」
 寝癖のついた泰三の頭を、新條は容赦なく殴りつけた。
「馬鹿野郎」
「イッテェ  ッ!」
 泰三が叫び声をあげる。
「さっさと始末して、集金に出かける支度をしろ」
 泰三が目に涙を浮かべて睨んでくるのを無視して、新條は事務所へ戻っていった。
 関東闘神会系松代組は、組みの存続の危機に瀕している。かつては古参として幅を利かせてきたが、現在はシノギも減って上納金を納めるのにも一苦労していた。
「泰三、何をしている。先に行くぞ」
 オンボロながらも自社ビルである事務所を出ると、新條は思わず溜息を吐いた。
   泰三も、もう少ししっかりしてくれればいいものを……。
 テキ屋のバイトから組に拾い上げられた泰三が、無類の風俗好きなのは新條のせいでもある。何故なら最初にに泰三をそのテの店に連れていったのは、他でもない新條だからだ。
 元来の好奇心旺盛な性格からか、以来泰三はアレコレと風変わりな性サービス店を渡り歩くようになってしまったのだ。
   何がそこまでいいんだ? 出して終わり。それでいいじゃないか。
 一方、新條は淡白な性質で、女は性欲を満たすためだけに抱く。自然、これと決まった女は今までほとんど作ってこなかった。女の相手をするのが面倒だという気持ちも多分にある。
 だからこそ、飽きることなく女を抱き求め、常に複数と関係を持ち続ける泰三が理解できない。
「ましてや……あんなサービス」
 今、泰三はアナル責めに嵌っていた。それこそ、連日連夜、女に尻を弄ってもらいに出かけるのだ。
「兄貴! 待ってくださいよ!」
 ビルから飛び出してきた泰三を、新條はうんざりした目で睨む。
「な、なんスか?」
「……分からんな」
 ぼそっと零して、歩き出す。
「ちょっと、兄貴! 何なんスか、今のっ!」
 新條は「まあ、他人の趣味にまで口出しする気はないが」などと思いつつ、ギラギラした太陽の下、集金に向かったのだった。
「でも、兄貴だって絶対にクセになると思いますよ? なんかもう、あの感覚は言葉じゃ言えねぇッスけど」
 派手な柄シャツに白のスラックスという、今どき珍しいくらいのチンピラファッションで決めた泰三は、顔だけならまざソコソコのものだ。
 しかし、背が低く、歯もボロボロで、どこに女を引き寄せる魅力があるのか新條には分からない。
「俺は必要ない」
「そんなだから、兄貴には女が寄ってこないんス」
 泰三が言う。
「俺のオヤジが言ってたんスけどね。金は欲しがるヤツのとこには集まらないけど、女は女の好さを知る男のところに集まるって  」
 女の、好さ……?
 新條は無言だった。
 そんなもの、知らなくて構わない。
 そう思ったが、口には出さない。
 言ったところで泰三には理解されないだろうし、理解されたいとも思わなかったからだ。
「ねえ、聞いてます? 兄貴?」
 十数メートルほど先に、商店街のアーケードが見えてきた。松代組の狭いシマのメインストリートだ。
 俺には、このシマと松代組があればいい。
 生きることに、それ以上の意味を見出せないまま、新條は日々を過ごす。
「兄貴ってば  !」
 泰三の声と蝉の声が、新條にはただただ耳障りだった。
                    おわり
 
      こんな彼らのお話です。
      どうぞ本編もよろしくお願いします。
                               2014.3.9
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