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この手の中の恋の一片を

BL作家*四ノ宮慶の商業活動等をお知らせするブログです。

 J庭36配布ペーパーSS

『その無垢な心に』※『准教授と依存症の彼』の元ネタの草稿です。

 彼は、謳う。
 朗々と、迷いのない声で。
 その言葉は、誰の耳にも心地良く、また、物悲しい。
 彼は、謳う。

 彼の見えるものだけが、まるで世界のすべてだとでも言うように。
                                           
 痩せっぽっちの背中を抱き締めると、彼は普段とはまったく違った妖艶な表情を浮かべて俺を振り返った。
「なんだよ、また、シたいのか?」
 酷く下卑た笑みなのに、どう言う訳か、ドクリと下半身が疼くのが分かった。
「駄目ならいい。無理させたくはないんだ」
「……別に構わないけど、昼飯も驕れよ?」
 彼は唇の端をいやらしく引き上げて微笑みながら、俺の首に細い腕を回す。
 それを黙って受け止めながら、もうすっかり彼に欲情している自分に、胸の中で唾を吐きかけた。
 彼を助けるフリをして、結局俺ができることは、彼を今まで良いように扱って来た大人たちと変わりない。
 紙とペンを与え、食事を与えて、その代価としてセックスを貪る。
「お前も、好きだな」
 呆れたように彼が笑うのを、俺は聞こえないフリをして、キスを強請った。
 もうこれ以上、彼が俺のことを、嘲笑う言葉を口にしないように  。
「ふふっ」
 彼は、セックスの最中も、まるで謳うように声をあげる。
「見ろ、まだお前ので濡れてる。すぐに……挿いりそうだ」
 掠れた高音の声は、なぜだか俺をひどく煽り立てた。
 骨の浮いた薄い胸を掻き抱き、本当に彼に与えたいものはこんな物じゃないのにと呟きながら、それでも俺は激しい快楽に身を沈めることをやめられない。
「馬鹿……言うな。充分狭い……っ」
 金がないわけでもなく、生活に困っているわけでもない。
 そんな彼が食事をとらないのは、謳う時間が勿体ないからだ。




「飯を食ってる暇があったら、俺は詩を書いていたいんだ」
 屈託のない笑顔を浮かべながら、彼は迷いなく俺にそう話した。
 紙やペンを買う時間さえ、勿体ないと言う。
「なら、セックスは  ?」
 意地悪に問い掛けた俺に、彼はほんのり上気した顔を晒して、こともなく言って退ける。
「だ……って、気持ちいいじゃないか?」
 そんなふうに答える彼に、俺は何故だか悔しくて仕方がなかった。
「んっ  。あ、……セックスの快感は、僕の詩の源……だ」
 情欲に濡れた瞳を眇めて、俺を見つめる。
「考えてみろ……ぁ、ちょっ……突くな、馬鹿ッ」
 尖った肩を竦めてあどけなく笑ったかと思うと、唇を俺の顎先に寄せる。
「セックスほど人間を醜く、そして美しく、妖しく光らせる行為がどこにある?」
 津波のような劣情と、凍えるような畏怖に圧倒される。
「ほら……も、もっと、奥まで……っ」
 言いたいことだけ言って、彼が自ら腰を揺らす。
「お前……とヤると……ッ詩が……んあっ」
 恍惚として堕らしくな唇を開き、快楽と、詩を貪る。
「奥っ……もっと、突き破って……いいからぁっ」
 甘い嬌声とぬるい体温。繋がった場所がやたら熱い。
「……はぁっ、んあ……もっとぉ……っ」
「  ックソ」
 何が、彼をこんなふうにしてしまったのだろう。
 何が、彼をこんな世界に産み落としてしまったのだろう。
「…あっ…、イィ……」
 深く深く繋がり合いながら、俺と彼の心は、遠く遠く離れたまま。
 熱く融けるような身体を乱暴に犯し、かき混ぜ、責め苛む。
 何よりも無垢で、残酷な彼の心を、俺は何よりも手に入れたいと願った。
                         end 四ノ宮 慶 2014.03.09
 
※初出は多分、2008年頃。分かる人には凄く分かりやすいモデルが、やっぱりいます。
キャラは違うけど、だいぶ篠崎と舜に近づいてきてるけど、実際に最初にプロットで出したとき篠崎は当て馬でした。改稿でここまでプロットと変わったお話は他にないです。
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