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この手の中の恋の一片を

BL作家*四ノ宮慶の商業活動等をお知らせするブログです。

 J*GARDEN 34配布ペーパーSS『HONEY』

『HONEY』『優しくしないで、ただ抱いて。』より
※内容を考慮して折り畳んでいます。


 ベッドが軋む音に、彼の余裕のない喘ぎが重なって、なんとも言えない充足感に満たされる。熱を持った肌に浮かぶ汗も、絶頂に感極まって彼が流す涙も、そして、吐き出される精液さえ、すべて舐め尽くしてしまいたい。
「やっ……あ、ああ……! もぉ……やめっ……変にな……るっ」
 舌足らずの甘えた声が、熱くてやわらかな粘膜に包まれたペニスを刺激して、思わず肌が震えた。うっかり放ってしまいそうになるのを、奥歯を噛み締めやり過ごす。
「……どうして? もっと気持ちよくさせてあげるよ」
 彼の中にすべて解き放ってしまいたいのを、何度も堪えてはやり過ごし、年下の恋人にひたすらに快楽を与え続けた。
 不慣れな自分では、きっと慣れた彼を満足させるのは難しい。
 だからこそ、これ以上はないというくらいの優しい触れ方で、彼が経験してきたどんな快感よりも心地よくしてやりたい。
 彼の過去に嫉妬しない訳ではないが、比べられるのはやはり嫌だった。
「もっ……いいっ、やめ……っ」
 紅潮した頬の上を、涙の雫が伝って落ちていく。
 その聖水のごとき涙を指で掬いとって、口に運んだ。
 塩分を含むはずの体液が、舌の上を甘露で満たす。
「本当に? 将貴、もっと欲しいなら、いくらでも……あげるよ?」
 言いながら、彼の腰を両手で引き寄せた。
「ぅあ……っ!」
 彼の快感が、己の快感に強く繋がる。
 初めて知ったセックスの直接的な快感よりも、相手の反応をこれほど鮮烈な快感を覚えるなんて知らなかった。
 今までにも好きになった人に尽くし、思いやることで幸福感を得てはきたが、彼  将貴から与えられる快感は、比べ物にならないくらいに私を幸せにしてくれる。
「かわいい……将貴」
 胸に募る想いを言葉にすると、彼は怒ったような、それでいてどこか嬉しそうな顔をする。
「も、ぉ……言う……なっ」
 本当は寂しがりな彼の強がりな一面さえ、愛しくて堪らない。
 こんなふうに、自分でもどうやって抑えればいいのかわからなくなるくらい、人を好きになるなんて思っていなかった。
「どうして? 私はただ……本当の気持ちを、きみに伝えたいだけなのに……」
 腰をゆっくりと前後左右に揺すりながら、身を屈めてキスを強請る。
「んっ……」
 甘い吐息と、素直じゃない言葉を紡ぐ唇を塞いで、甘い唇を存分に味わう。
「はっ……んっ、んぁっ」
 何度も小鳥が餌を啄むように、律動に合わせて角度を変えてキスを繰り返した。
 そうして、ゆっくりゆっくりと、彼とともに頂きへと昇っていく。
「あっ……ン、んっ……ふぅ……ンッ」
「……まさ……たかっ」
 腰の奥がぶるりと震え、それは全身を伝わって広がっていく。そうして組み敷いた彼の華奢な身体にも、震えは移り、広がっていく。
「あ、あぁ……っ」
 脳の奥で、何かが爆ぜたような錯覚を覚えると同時に、二人、目も眩むような絶頂に襲われた。互いにしっかと抱き締め合って、このままひとつに溶け合えばいいのにとすら思う。
 互いの腹が精液でヌルヌルしても、少しも不快じゃない。汗ばんだ肌が隙間なくぴたりと密着して、本当に、このままひとつになってしまえるなら、それでも構わなかった。
「はっ……ん」
 彼とのキスは泣きたくなるほど甘く、切ない。弾力のある唇をやんわりと噛んでみると、肩をきゅっと竦めて縋りつくのがいじらしかった。
「好きだよ、愛しているんだ」
 尖った肩に顔を埋め、想いのたけを込めて伝える。涙が滲んだみっともない顔を、彼に見られたくはなかった。いい歳をして、情けなくて堪らない。
 人を好いて、幸福であるとともに、どうしようもない胸苦しさを感じると教えてくれたのは、将貴だ。愛や恋が、ただ幸せに溢れたものじゃないのだと、彼は私に鮮烈に突きつけた。
 どこか寂しさの滲む瞳でじっと見つめては、彼は私を虜にする。
 だからこそ、彼が愛しくて堪らない。幸福に溺れさせてやりたくて、仕方がないのだ。
 甘く甘く、どんな極上の甘味料よりも甘く、蜂蜜のような愛を注いで、いっそ彼を溺れさせてしまいたい。
「うん、俺も……あなたが好きだ」
 けれど、どんなに愛を注いでも、彼の甘い言葉には敵わない。
 彼の甘い蜜に溺れているのは、私の方なのだから……。
 
                 end 四ノ宮 慶 2013.03.03

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